「行こう!」
そう言って手を差しのべてくるトルネードを、私はぽかんとして見上げていた。
「な、何を言ってるの!?」
「行こうって言ってるんだ!」
「それはわかってるわよっ」
「だったらなんでこんなところにいるんだ!」
施設中に鳴り響くアラートがうるさくて声を張り上げないと聞こえない。
私はこの馬鹿な男の目を冷まそうと大きく息を吸い込んだが、それよりトルネードが声をあげる方が早かった。
「このままだと俺たち廃棄されるんだぞ!」
馬鹿な男だ。
水の中にひっぱりこんだら、少しは頭が冷えるかしら。
「わかってるわよっ。もう決まったことにうじうじうじうじみっともない!」
「決まってなんかない! 俺たちはまだ働ける!」
たゆたうばかりで手持ちぶさたな両手を、胸の前でぎゅっと握りしめる。つるりとした強化ガラスのポッドの中に、掴めるところなんてない。
「大体、私は水から出たら歩けないし…」
そう言うと、トルネードが眉をしかめるのが見えた。ずっと伸ばしたままの手を更にこちらへとやろうとしているけれど、私に届きそうもない。
「お前一人ぐらい俺が運んでやる! そこから上がれば、俺が何とかしてやるから!!」
トルネードが叫ぶと、目の前の手もそれに合わせて少し揺れた。
私は胸の前で手を組んで、つるりとした強化ガラスのポッドの中からそれを見上げている。
「手を伸ばしてくれ、スプラッシュ! 」
私は、