(ロック(ヤンデレ予備軍)→→→→フラッシュ→→→→勘弁してください)
(なんかいろいろあってフラッシュマンとロックが同棲していたらシリーズ)
「戻ってきてほしいって言われた」
俯いて呟いたのはロックである。
対してフラッシュは、(そんな顔をして言うもんでもないだろうに)と思った。思ったが、思っていることを顔に出さずにいるのはフラッシュの得意技であるので、努めてなんてことはない風に返した。
「よかったじゃないか」
「よくないよ」
「よくないか」
「うん。全然よくない」
そうか、ともう一度口の中だけで小さく答える。何やら張りつめた感じのあるロックが見ていられなくてそっと目をそらした。窓の外はもう随分と暗い。
「ドクターワイリーは僕と君が一緒にいるのが気に食わないんだね」
「はあ。いや、別にそうでもないと思うが」
「そうだよ。絶対そう。だから事あるごとに騒ぎを起こして僕を引っ張り出そうとしてくるんだ」
「今回の騒ぎの犯人はミスターエックスとやらだと聞い」
「あんなのワイリーに決まってる! とんだ茶番だよ! もう、ほんと、バカみたいだ」
話途中を思い切り遮られたフラッシュはそうですかと返すことしかできない。
前々から常々思っていたがこいつはさっぱり人の話を聞かない。さらに決めつけや思い込みが激しく、当人にとって迷惑極まりない行為も「君のため」だのなんだの言って平気な顔でする。
「僕は君といたいだけなのに」
さらに言うと、どうやらフラッシュのことを特別好いている。
こうなってはもうなんと言ったらいいのかわからずにひたすら「そうですか」と繰り返さざるを得ない。こいつは俺の理解の範疇を完全に突きぬけている。もう何度も思ったことをもう一度思いつつ、フラッシュは意味もなく窓の外に向けていた視線を俯く少年へと戻した。
「ええと、なんだ、その、準備とかはしなくていいのか」
「してほしいの?」
「えっ」
「してほしくないって言ってくれたら、僕はもう少しここにいれる」
もう本当なんなんですかこの人は
「し てほしくないかもしれないことはない」
「本当に!?」
「あ、ああ」
ばっ! と突如顔を上げたロックに内心びくつきながらフラッシュは頷いた。ロックは「イエスかノーか」ではなく「イエスだよね?」で人の意思を聞いてくるタイプである。しかも「ノー」と答えても最終的に「イエス」と答えるまでとことん粘る。
その経験に基づいてフラッシュは例にもれず最初から「イエス」と答えたのだが、もしかしたらロックはこれが本当にフラッシュの意志だと受け取ったのかもしれない。というかおそらくそうだ。
「わかった。ライト博士にはすぐ来てくれって言われているけど、もう少しだけここにいるよ」
「いや、呼ばれているなら急いだ方がいいんじゃないかな、と、思わんでもない」
「大丈夫、世界のロボットだかなんだか知らないけど、すぐにやっつけられるから」
「えー、参考までに聞くが、一体いつになったら出発する気だ?」
「うん? うーん、そうだねえ」
どれくらいかかるかなあ、とロックは首を捻った。(どれくらいかかるかなあと言われても)とフラッシュは思った。思ったが、思ったことを顔に【中略】ので、努めてなんてことはない風に装った。
「朝になったら」
「あさ」
「うん。朝日が昇ったら、ここを出るよ」
言われてフラッシュは思わず窓に目をやった。
太陽の影も形もないくらい真っ暗な空と、人工的な明かりを灯す町並みが広がっていた。