ざぶん




という音はとても不思議だと思う。
そもそもざぶんってなんだ。ざとぶとんだ。ざぶとんに似ている。
でもきっとざぶとんを投げ込んでもざぶんという音はしないはずだ。もっとこう、水を吸って重くなっていく感じの音

重くなっていく感じの



「何をしてるの」
「何だと思う」
「環境破壊」



俺の横には古くなったコンピュータと古くなった望遠鏡と動かなくなったロボットとかあれやこれ
前には海がある
天気は快晴


「環境破壊日和だからな」
「そう」


言いながらコードが千切れて胴体の配線盤が丸見えのもう動かないロボットを投げ入れる。


ざぶん


これだこれ。この音。
重いものを深い水の中に投げ入れた時の音


「いい音だよな」
「何が」
「この音。ざぶんって、重たいものを海に投げ入れるのが趣味なんだ」
「それお見合いの席では言わないようにね」
「私の名前はフラッシュマンです」
「ご趣味は?」
「重たいものを海に投げ入れることです」
「コンクリ詰めのことかと勘違いされるよ」
「ヤのつく人たちと仲良くないから大丈夫」


ざぶん
持って投げて落ちる。
ざぶん。
海が揺れている。バブルが迷惑そうな目でこちらを見ている。
俺はバブルのゴーグルに反射する光が眩しかったので一度目を塞ぐ。
開く。
海はまだ揺れている。
横を見る。

「あ」
「どうしたの? ヤのつく人たちでもいた?」
「順番を間違えた」


気づいたらあれやこれやは小さなメモリーチップだけになっていた。

屈んで拾い上げる。太陽にかざすと、小さなシルエットの周りからたくさんの太陽の光があふれ出てきて目を塞いだ。


今度はもう目を開かない。
開かないでそのまま海がある辺りの方へ放り投げた。




ちゃぷん




「嫌な音」
「軽いのを投げ込むのは好みじゃない?」
「ああ」



目を開く。
海は変わらず揺れている。




ちゃぷんというのは良くない音だ。
この音がすると軽いものだったように思えてくる。

決して軽くなんかないのに





縁に足をかけると揺らぐ海面が良く見えた。
大きく足を一歩踏み出す。

今日は環境破壊日和だ。








ざぶん



大きくて重たいものを投げ込むのがいい。
だけど座布団のように段々と重くなっていくのはいけない。


これ以上重くなることもなく

ざぶんという音だけ立てて



後は沈んでいくだけ







それがいい






被虐コレクション あれやこれ