「100年だ」


決まっていたものをなぞるかのように手が動く。驚くほど迷いがなかった。


「100年経てばきっと、この世界は変わることができる」


人の命はまだ儚い、少なくともすでに命はないだろう。
だけど、


「急激な変化は淘汰されるんだ、君は自分が社会的存在でもあるということを自覚しなければならない」


自分も彼もロボット工学者なのだ。命の終わりは単純に終わりを意味しない。


「あと100年だ」


淀みなく動いていたペンが、用紙にひっかかって嫌な音を立てた。

その紙の左上、一番目立つように『X』の文字




「たったの100年じゃないか、アルバート」







我々はロボット工学者だ。
その意思を託す術を持つ人種であるのだ。

 

 

(きみとばからしい空想をつれて)