機体表面をつたう雨は、彼の熱を奪い取ることで緩やかに気化していく。少しずつ熱を失う己に気づいていながらも、彼は動こうとしなかった。
ざあざあと世界が流れていく。その中に在って唯一冷めぬのは回路の中で囁く私の声だ。彼は一度そっと右手を握り、そして開いた。彼は雨が降り出すより前に熱を手放した横たわる抜け殻をじいと見ている。彼は一度そっと目を瞑り、そしてそのまま。いけない。彼は彼を疑ってはいけないいぶかしんではいけない信じなければいけない私を
「フラッシュ」
彼は呼ばれたので目を開いて、そして振り返った。彼はライムグリーンの瞳に赤い機体を移す。緑の中の赤は彼を見て端正な眉を寄せた。彼は眉を寄せた緑の中の赤を緑の瞳に捉えて首を傾げる。何故彼は彼をそんな目で見るのだろうと思うより先に私はその答えを知った。
雨が止まない。彼の瞳に映る赤い機体が口を引き結んでいるのと対照的に、彼の口は緩やかな弧を描いていた。
ざあざあざあと
それで正しい。夢は見るからこそ終わるのだ。
彼は夢見てはいけない彼は疑ってはいけない彼は彼を