「かくまってくれ」

誰か来たなと思うころにはすでに部屋の中に入ってこられていた。
徹夜明けで今まさに布団に入ったところだったフラッシュは目を瞬かせてメタルを見つめる。

「なんだ藪から棒に」
「仕事明けに悪いな。少し邪魔するぞ」

良いとも悪いとも言っていないのに大股にベッドに近づいてきたメタルは、そのままフラッシュを乗り越えて隣に潜り込んできた。

「おい、許可した覚えはねえぞ」
「しい」

文句を言おうとしたが、マスクに形のいい指を添えたメタルに遮られる。確かにこの部屋に隠れられるところは少ないが、なんでよりにもよってベッドなんだ。
そう思ってフラッシュがため息をつくのと、ドアの向こうから声をかけられたのはほとんど同時だった。

「フラッシュ、今大丈夫か」

きちんと入室前に許可をとってくる。後ろのブラコンとの違いに感動しかけたが、よく考えなくても人の部屋に勝手に入らないというのは常識だった。

「ああ、開いてるよ」

答えると少ししてからドアが開いた。廊下から漏れる明かりに少しアイカメラの感度を落とす。
廊下に立ったまま部屋に入ってこないエアーは、ベッドの中にいるフラッシュを見て何度か瞬きをした。

「すまん。寝るところだったのか」
「大丈夫だ。それよりどうしたんだ」
「いや、メタルが来ていないか聞きたいだけだったんだ」

なるほど。”エアーから”かくまってくれか。
納得したフラッシュだったが、今度はどうしたもんかと頭をひねる。正直言ってメタルを庇う理由もメリットもないので引き渡したいが、ここでまた口論になっても困る。

「悪いが見てないな」

十割自分の平穏な睡眠時間の為にメタルをかくまうことに決めた。
自分のことを信頼してくれているエアーに申し訳ないという気持ちもあったが、背に腹は代えられない。

「そうか。こっちこそ邪魔して悪かった」
「いいよ、別に」
「ああ。ありがとう」

遠ざかっていく足音に罪悪感がむくむくと膨れ上がっていくのを感じていると、布団にもぐりこんでいたメタルがもぞもぞと顔を出す。

「助かった」
「そう思うなら今すぐ出ていけ」

立ち上がって布団をはぎとりながら言うと、メタルも抵抗しないでベッドから降りる。ぼそりと「次はクラッシュのところかな」と呟いたのを聞かないことにして、フラッシュは知りたくないが気になることを尋ねた。

「それで、今度は一体何をやらかしたんだ」
「ん? フラッシュも見るか」

どことなく嬉しそうにしながらメタルが取りだしたものを見てフラッシュは持っていた掛け布団を取り落とした。
しかしメタルはそれを気にも留めないで持っているものの説明を始める。

「一週間前にやっと全員分揃ったんだ。それで折角だから人間みたいな洋服を作って着せ替えさせたりしたらいいんじゃないかと思ったんだが」

1/12スケールの恐ろしく精巧に作られたクラッシュマンの模型を手にしながら無表情で語るメタルに、フラッシュマンは純粋な恐怖を抱いた。

「そうだ、フラッシュは最初に何を着てみたい?」
「メタル」

言葉を遮り、ベッドを指さしながら言う。

「少しの間そこに座って待ってろ」

メタルはまたもや抵抗なしにすとんとベッドに逆戻りする。それを見届けたフラッシュは最後にもう一度「一歩も動くなよ」と声をかけて、ドアを開けて廊下に顔を出した。
ちょうどクイックの部屋から出てきた大きな機体を見て安心する。後で謝らないとと思いつつ、とりあえずフラッシュは声を上げた。

「エアー! 今すぐ来てくれ!」