朗らかな春の日差しが降り注ぐ午後。フラッシュはカメラ片手に基地内を練り歩いていた。ラボで仕事をしているメタルの隠し撮りや、トレーニングルームで手合わせをするクラッシュとクイックの隠し撮りなど、こういうと隠し撮りしかしていないのかと思われるが、まあ事実隠し撮りしかしていないのだが、とにかく今日の成果を確認しながらリビングに向かう。今日はまだエアーやヒート、ウッドに会っていないなと思ったからだ。エアーはともかく、ヒートとウッドはリビングにいることがままある。
 と、リビングに至る廊下の途中、バブルの部屋のドアが開いた。バブルが部屋から出るなんて珍しい、と思っていると、予想に反して中から出てきたのはヒートだった。ヒートが単機でバブルの部屋まで訪ねるのはさらに珍しい。フラッシュが目を瞬かせていると、部屋の中、恐らくバブルに向けて手を振っていたヒートがこちらを向いた。

「兄ちゃん!」

 嬉しそうな声を上げて近づいてくると、そのままフラッシュの指先を掴む。

「今カメラある? あるよね。ちょっと来て!」

 言うが早いかフラッシュが返事を返さぬ内にぐいぐいと引っ張り歩き出す。ヒートはよくフラッシュのことを先導したがるが、いかんせん大きすぎる身長差のせいでどこから見ても大人ぶる子供とその父親である。

「急ぎの用か?」
「んーそこそこね。あ、もしかして忙しかった?」

 断じてそんなことはない。フラッシュは忙しいなら忙しいで愚痴をこぼすが、暇になったらなったで耐えられなくて自主的に仕事を探すようなロボットである。

「いいや、今は被写体探してうろうろしていたところだ」
「それじゃあちょうどいいね。ぼくたちもフラッシュを探してたんだ」
「たち?」

 ヒートがぼくたちと言ったとき、大抵それはヒートとウッドのことを指す。しかしウッドの姿はどこにもない。
 そんなフラッシュの様子に気がついたのか、ヒートは手を繋いだまま歩みを止めずに振り返った。

「ウッドはエアーと一緒だよ。森にいるから」

 そうなのか、と頷いたフラッシュを見たヒートは前を向き直ったが、基地の外に出るときに思い出したようにもう一度フラッシュを見て言った。

「あ、できるだけ物音を立てないように注意してね」

 どういうことだ。








 と、思ったのだが、森にある小屋の前の風景を見て、フラッシュは一人納得した。
 なるほどウッドはエアーと一緒にいて、フラッシュに気づくと嬉しそうにはにかんだ。ただしいつも交わされる挨拶はない。
 なぜここまで徹底して静かであろうとするのかというと、その原因はエアーにあった。ここまで言えば大方の人が予想がついたと思うが、大方の予想通りエアーはウッドの背にもたれかかるようにして眠っていた。
 それだけでも滅多に見れない光景なのだが、今はウッドの友達とおぼしきリスだとか小鳥だとか蝶々だとかが集まってきていて、当然エアーの肩などにも登っている。

 フラッシュは一度ヒートの頭を撫でてやり、それから何の躊躇もなくカメラを構えて本日3回目の隠し撮りをした。