「ああ、フラッシュ。いいところに」

リビングのドアを開けて一言目がそれだった。
ソファーでくつろいでいたフラッシュは仕方がなくドアの方を見やる。

「・・・何だよ」
「今日はクイックのメンテナンスの日なんだが、兄さん今から博士の手伝いをしなくちゃいけないんだ」
「断る」
「まだ何も言ってない」
「言い方を変えようか? クイックのメンテはしない」

言い放つと沈黙した。
フラッシュは何を考えているかわからない無表情から持っていた本に視線を移す。
折角仕事を終わらせて休憩をとっているのに、バカのメンテをするなんて冗談じゃない。

「それは困ったな。もうすでにラボで待たせているんだ」
「そのまま待たせとけよ」
「10分と経たずどこかに行ってしまうだろうな」
「行かせとけ」
「フラッシュ」

声色が変わった。

「言い方を変えようか? クイックのメンテナンスをしなさい」

口からついて出たため息の音は、本を閉じる音でごまかした。
もう一度ドアの方を見る。最初に見たときと変わらず無表情だ。
この能面め

「わかりましたよオニイサマ、やればいいんだろうが」
「いい子だ」
「いいから早く行けよ」
「良い弟を持って幸せだなあ」
「くたばれ」