「我々はいずれ死ぬ」
「死ぬ?」
「ああ。いずれは死ぬ。俺も、お前も」
「ロボットに死ぬという概念はない」
「ははっ。そうだな、最初はみんなそう思う」
「お前も?」
「兄さんと呼びなさい」
「嫌だ」
「・・・今日の話はここまでだな。残念だ」
「呼ばないぞ」
「そうか。ところで俺も昔はロボットは死なないものだと思っていた」
「・・・・・・・・・」
「どうした?」
「何も」
「ならいい。それで俺もロボットは死なないと思っていた。なぜならロボットはそもそも生きていないからだ。死の定義は非常に曖昧なものだが、生きていないならば死んでいるのだとすれば、ロボットは生きも死にもしない」
「その通りだ。ロボットは生きることも死ぬこともない」
「だがそうとも言えない。少なくとも俺は今生きているのだと思うよ」
「話が矛盾している」
「考えは変わり得るから価値がある。ところでナンバー014、街を歩いている人間は生きていると言えるか」
「言える」
「ならばやつらに聞いてみるといい。生きるとは何か。自分で思考する、食事をとる、呼吸をする、おそらくこういうありふれた答えが返ってくる。これに照らし合わせて我々が生きることができるか考えてみなさい」
「ロボットの思考は全て起動前に構築されたプログラムに則るものであり、そのパターンは創造主に依存する。自分で思考しているとは言えない」
「人間だって変わらないさ。思考の場となる脳を構成する蛋白質は全て親のDNAを基に作られたものであって、自分由来のものではない」
「極論だ」
「そうかも知れないな。他にも、何を言ったか。そう、俺たちには食べ物を摂取し分解する機能が備えられているし、排熱の為の吸気と排気はそのまま人間の呼吸と置き換えても大差ない。ロボットと人間に違いがないなら俺たちだって生きていると言えるだろう」
「・・・理論が破綻している」
「頭が固いぞ。起動したらそういうわけにもいかない。俺はもう出るがまたしばらく考えておくんだな」
「お前は嫌だ」
「・・・寂しいことを言ってくれるな」
「次はナンバー011にしてくれ」
「考えておく」
「考えておくは断る時の常套句だ」
「博識だな」
「お前が言った」
「・・・・・・生と死は人間たちが挑み続けてなお明確な定義が得られなかった概念だ」
「話をそらすなよ」
「まあ、そこまで難しく考える必要はない。所詮我々はロボットだからな」
「だからお前は嫌なんだ」
「そう言うな」