空は明るく太陽が煌々と照っています。
突き刺さる夏の日差しの中、彼は一人でした。
*
辺りは一面瓦礫の山でした。足の裏で積み重なったビルや警備ロボットの残骸が音を立てるのを感じながら、彼は迷うことなく、けれど重い足取りで進んでいきます。
これだけ明るいのに、まるで月の無い夜道を歩いているようだ、と彼は思いました。さらに例えるなら、母を失った子のような、杖を奪われた全盲の人のような気持ちでした。
母を失い杖を奪われつつ進んでいた彼でしたが、特に何も見当たらない、瓦礫やロボットの残骸しか見当たらないところで立ち止まりました。それから、重なる瓦礫の一つに足をかけて、空いた隙間に手を入れて引っくり返します。そうやって、瓦礫の一つは彼の足元からなくなりましたが、その下に見えるものもやはり瓦礫や残骸でした。
あちこちで折れた鉄骨が張りだし、足場も不安定で危険な状態にも関わらず、彼は果敢にも瓦礫の山に挑んでいきます。
じりじりとそのエナジイを存分に発揮する夏の太陽にも汗一つかかず、そのまま瓦礫を掻き分けていくと、きらりと日の光を反射するものがあります。彼は一瞬その眩しさに目を細めましたが、すぐに手を伸ばして、光るものを掴んで引っ張りました。
彼の手のひらに問題なく収まる大きさの、光を返す金色の金属は、途中で一度瓦礫に引っ掛かったものの、彼がぐっと力を込めるとコンクリートの欠片を引っくり返しながらその姿を現しました。途中で90度くらい折れ曲がり、先にいくほど細くなる、ブーメランのような形状をしています。
そのブーメランのお陰で大分退いた瓦礫の向こうには、やはりロボットの残骸があるだけでした。
今まで黙々と瓦礫の撤去作業を続けていた彼は、そこで初めて手を止めて、足元を見下ろす形で俯きます。
「ばかだ」
彼は咎めるように、悲しむように、祈るように呟いたのですが、それを聞くものはいませんでした。
「お前はばかだ」
*
夏の日差しに背を焼かれて彼は佇んでいます。
一人祈る彼を慰めるように、手にした三日月が一度だけ瞬いたのでした。