ラボで待たされて5分。
いい加減帰ろうかと思い出した頃にやっとラボの扉が開いて誰かが入ってきた。
メンテ用のベッドにうつ伏せていた顔をあげて来訪者を確認する。
メタルが来るとばかり思っていたが、違った。
あいつはこんなにでかくも青くない。

「…なんでお前なんだよ」
「メタルは博士の手伝いだとよ。俺は休憩中のところわざわざ引っ張られてきたんだ文句言うな」

大いに文句があったが口にする前にハゲはオレに背中を向けて何やら準備を始める。
その姿に、仕事というものをしていることを実感してしまい、なんとなく声が掛けられなかった。

オレのCPUはこのハゲと比べて大分出来が悪い。そのことをどうこう思ったことはないが、こうやって自分にできないことをなんなくこなしているのを見ると、頭がいいんだなとは思う。

「繋ぐぞ」
「ああ」

オレはメンテナンスが好きではない。頭の中を見られるのが嫌とかそういうわけではなく、一度コードに繋がれてしまえばしばらくはベッドから離れられないのが耐えられなかった。
今もモニタを確認しながら何か操作をしているフラッシュを眺めていることしかできない。

「暇だ」
「そうかい。俺はどっかの誰かのせいで忙しいがなあ」
「これいつ終わるんだよ」
「今始まったばかりだろうが。終わったら言うからちょっと黙ってろ」

会話の間も一度もこちらを見ない。
暇だ。
さっきフラッシュが取り付けたコードの一つを軽く引っ張る。これが抜けたらどうなるのだろう。

「おい、何やってんだバカ」
「誰がバカだ」
「お前だよ。あーもう落ち着きがねえヤツだな」

作業を一度中断してフラッシュがこちらを覗き込む。
透き通る鮮やかなライムグリーン

「いいか、それ抜くとデータだのメモリだのぶっ飛んで色々とめんどくさいことになんだ」
「前にも言われたな」
「言った。で、理解してもらえましたかねえ」
「わかってる。心配はしてない」

ダメだこいつ、みたいな目をされた。

むかついたが動けないのでグッと我慢する。
確かにメモリ容量はでかくはないが、こいつが思うほどではない。大事なことはきちんと覚えている。

「うそじゃない、本当に心配してないんだ」
「あーあーそうかい。とにかくお前は動くな。ついでに黙ってろ」

そう言ってフラッシュはモニタに向き直ろうとする。
オレはあの透き通る緑は嫌いじゃないのに。

「オレのデータが飛んでも、お前が何とかしてくれんだろう?」
「……誰がするか」
「嘘つけ、ちゃんと覚えてるぞ。お前あんとき」
「いいから、お前は黙って寝てやがれ!」

叫んだ顔は赤く色づいていた。
望む緑は隠れたが、これでもいいか。

そう思ってクイックは目を閉じた。






「…暇だ」
「一分も持たねーのかお前は」