「ごきげんよう!」
徹夜明けのところを異常なハイテンションで訪ねてきたジェミニに、フラッシュはひとまずため息をついた。ついで、極力体力を消耗しないようにと心がけて眉間を押さえつつ返事をする。
「……どうも」
「なにやら疲れた顔をしているね、フラッシュ君。今なら僕が手伝ってあげようじゃないか!」
「結構だ」
「そう遠慮せずに。君と僕との仲だろう?」
この時点で言いたい文句が山ほど出てきてしまったフラッシュだが、全霊をかけて飲み込んだ。今ここでジェミニと会話をする気力はない。
そんなフラッシュの心情もよそに、大分空いていた距離を詰めてきたジェミニは、内緒話をするときと同じように、片手で口許を隠しつつフラッシュの聴覚センサのすぐそばで囁いた。
「実はシャドー君から君の助けになってくれと頼まれてね」
あいつ後で絞める。
今後の予定にしっかりとそれだけ刻みこんでいる間に、内緒話はもう終わったのか、ジェミニはもう一度少し離れて大袈裟に自分を指しつつ続けた。
「僕も君には世話になっている身だ。お礼に力になってあげるから、何でも望みを言ってみるといい」
正直に「俺の一番の望みは今すぐお前がいなくなることだ」と言ってしまいたかったフラッシュだが、余計絡まれることは目に見えていたために我慢した。
いっそクイックくらい頭が足りなければ適当なことを言って帰らせるのに。
「リビングに行くと、机の上にファイルが三冊置いてある」
「うんうん」
「俺があとでメタルに渡そうと思っていた分だ。とりあえず今すぐそれをメタルのところまで持っていって…」
「それから?」
「…あとはメタルに聞け。フラッシュの助けがしたいがどうしたらいい、ってな」
「よし、任せたまえ!」
大きく一つ頷いたジェミニは、最後に「あとは僕に任せてフラッシュ君は寝るように」と言い残してさっさとリビングの方へ歩いていった。
体よくめんどくさい後輩機をメタルに押し付けたフラッシュは、リビングに向けていた足を反転させて自室へ向かう。
ジェミニはあんなだが仕事は確かだ。うまくメタルにこき使われるだろう。
そういえばメタルもあんなだが仕事は確かだ。
フラッシュは、仕事ができるやつは皆どこかおかしいのか、と失礼かつ自分の首を絞めかねないことを思いながら自室のドアをくぐった。