「フラッシュマン様と我々との違いは何でしょうか」
「ん?」
脈絡のない問いに彼は目を瞬かせた。
「どうしたいきなり」
「クラッシュマン様はかつては我々の同胞でした。しかし今はナンバーを与えられています。皆様と我々との大きな違いは何であるかと考えていましたが、答えが出ないためお尋ねしました」
今までにない質問に彼は先程とは違う意味で目を瞬かせた。命令に従うために生まれたロボットが、今まで当然としてきたことに疑問を持つというのは滅多にないことだ。
彼は思わず綻びそうになる口元を意識的に引き結んだ。あるいはこのロボットはクラッシュマンを羨んでいるのかもしれない。そうであるとすれば、これは大きな進化である。解答を誤ってはいけないと思った。
「俺はお前らがやられないような作戦を立てるし、お前たちは俺がやられないように働く。役割が違うだけで、そう大した違いはないさ」
「わかりました。フラッシュマン様が破壊されないよう努めるのが我々の命題であるのですね」
少し違うな。そう思ったけれど彼は笑うだけで何も言わないでおいた。旧時代ゆえのこの生真面目で極端な考え方が、彼は嫌いではなかったからだ。
彼は、彼の部下のように単純な電脳しか持たないロボットにおいても、時間と経験があれば徐々に高度な思考を形成できるようになると信じていた。今はわからなくても、いつかは己の言葉を、そこに込められた意図を理解できる日がくると。
「それで、フラッシュマン様。フラッシュマン様と我々との違いは何でしょうか」
大きなモノアイが自分をじっと見上げてくる。質問の内容も、どこまでも真面目な己の部下も、両方がおかしく、いとおしく感じたので、彼は笑って「いずれわかる」とだけ告げた。
ジョーは「わかりました」と返した。
*
侵入者に揺れる基地内において、彼の部下の判断は正しかった。
しかし決して、彼の望むものではなかった。
「違う。違うんだ」
壊れた照明では、この地下深くまで照らすことはできない。黒く色を失った世界では、彼が足を進める度に、積み重なった瓦礫が崩れる音がした。
せめて涙が流れたのなら、彼は自分が泣いていることに気づけたかもしれない。
その場に残された、小さくなってしまったロボットを抱いて彼は小さく呟いた。
「…ごめん」
声に秘められた悲しい痛みを聞くものはもはやいない。
それは彼にとっておそらく不幸なことであった。