毎度の如くノックも何もなしで人の部屋に乗りこんできたクイックに文句の一つでもつけてやろうとドアの方に向き直る。
しかしその相手は部屋に入りきらない位置で右手を突き出すように構えていた。因みにクイックの右腕には小型ブーメラン発射装置が備え付けてある。
つまりこれは何かしら攻撃したい時に使うものであって、間違っても勝手に部屋に入り込んできた挙句挨拶もなしに人に向けていいものではない。

「な、なんだよいきなり」
「誰だ」
「はあ?」
「そいつ誰だ」

言われて気づくが、よく見ればクイックが見ているのは俺じゃなくて俺の後ろの空間である。
誰だと聞くぐらいだから誰かがいるのだろうか。何の気配も感じないが。

いやーな予感を抱えつつ後ろを振り返る。


「・・・・・・・・・」


誰もいない。


「えーと、誰かいるのかは俺が聞きたい」
「知らない奴を部屋にいれたのか?!」

いや、そもそもいれてない。

「あーなんだ。とにかく落ち着け」
「落ち着いてる! お前は弱いんだからそこどいてろ」

かちんときたが全力で抑える。落ち着けと言った手前落ち着かなければ。

「よく見ろ。俺は誰も部屋に入れた覚えはない」
「じゃあなんなんだよその女!」

女、がいる、らしい。
念のため熱探知もしてみるが特に問題はない。部屋にいるのは俺とクイックだけだ。


「・・・・・・・・・」


そういえば今は夏だった。

「よし、久しぶりにメンテしてやる」
「なんだよいきなり。それよりその女だって!」
「大丈夫だ。徹底的に見てやるから」
「別にいいよメンテは今度で。とりあえずあいつ捕まえてから」
「はいはいはいはいとにかく部屋を出ろ話はそれからだ」

無理矢理部屋からは追い出したもののまだ何やら言ってくるクイックに背中をどつかれたので足を蹴り返す。
廊下を歩きながら掴んだり蹴ったり殴ったり蹴ったりしている俺たちの後ろで、部屋のドアがいつもより少し遅れて閉まった。