プールサイドに両腕をひっかけてのんびり旅行雑誌を広げていると、部屋の扉が開いて3つ下の弟機が入ってきた。

「何しにきたの」
「これ頼まれてたやつ」

言いながら投げられたチップを右手で受け取る。手を開いて確認してみるが、何の変哲もない普通のチップだ。

「なんだっけ」
「あのなあ!」
「うそうそ。覚えてるよ。ありがとう」

基地から日帰りでいける秘湯を探してほしいと頼んだのは五日前のことだったと思う。ちなみにフラッシュが、ウッドに忙しくて仕方がないという愚痴をこぼしていたのは昨日のことだ。

今はメタルにお金止められてるから、そんなに急がなくてよかったのにとは言わない。

「バブル」
「なにー」
「入っていいか」
「いいも何ももう入ってるじゃん」

とりあえずチップをしまいながら返事をしていると、足音が近づいてきたのでもう一度ドアの方を見る。
あ、と思うころにはすでに、青い機体はバブルの私室に備え付けられているプールの中に消えていた。

「ちょっ」

バブルマンは水中専用機だが、他のナンバーズも一部を除いて耐水機能ぐらいはある。
あるにはあるが、問題は重量のせいで沈みっぱなしになってしまうことと、このプールの水深が10メートル以上あるということで、

あまり深く考えず、持っていた雑誌を放り出してバブルも泳ぎなれたプールの底めがけて泳ぎ出した。






「危ないでしょ」
「あー悪かった」
「なんで急に飛び込んだりしたの」
「気持ち良さそうだったから」

ストレスというのは溜めるとこんなふうになるらしい。
引っ張り上げた弟を抱えながらバブルは思わずため息をついた。
説教はひとまず諦めることにする。なんか相当疲れてるみたいだし。

「二人でこっそり温泉行っちゃおうか」
「また今度な」
「それは遠まわしに断ってる?」
「メタルに金もらえてねえんだろ」

ゴーグルの下の目を見開いた。
なんだ、知ってたんだ。


ちっとも自分で泳ごうとしないフラッシュを、プールの端っこまで引っ張ってやる。
流石にプールサイドに手が届くところまで来ると、フラッシュは自力でプールから出て、今度はそこに腰かけた。足だけ水の中に入れてぼおっとしている。
本当に疲れているみたいだ。ストレス恐るべし。

「まあ、ゆっくりしてってよ」
「うん」

さっき放りなげた雑誌を引き寄せて開く。
すぐ隣で水の跳ねる音を聞いた。